親権・養育費・面会交流

子供の親権者

離婚する際、子供の親権者を定める必要があります。
夫婦は、婚姻中は、子供の親権を共同で行使しているのですが、離婚の際は、どちらか一方の親が子供の親権者として定める必要があります。
夫婦の話し合いで親権者を定めることができれば、それでよいのですが、夫婦の話し合いで決まらないときは、最終的には家庭裁判所に決めてもらうことになります。

親権者を定める際の判断基準

では、子供の親権者について、夫婦で話し合いで決まらないときは、家庭裁判所は、どのような判断基準で決めるのでしょうか。法律上は明示された基準はありません。
法文上「子の利益を最も優先して」(民776条1項)とか「子の利益のため」(民819条6項)というように、抽象的に規定されているだけです。
実務上は、①監護の継続性、という点が重要視されています。
その他、②子供の意向(15歳以上の場合は、子供の陳述を聴くことが要求されています。)、③子供の年齢、④兄弟との不分離、⑤父母の生活状況、監護意欲、監護態度、監護能力、現実的な監護態勢、⑥現在の監護状況となった事情、⑦面会交流への協力程度などの事情を総合して判断されることになります。

離婚時の親権者を後日変更する場合の手続

離婚の際は、子供の親権者を夫婦の話し合いで決めることができますが、一旦、親権者が一方の親に決まると、その後、親権者を他方の親に変更することは、親同士の話し合いだけでは決められません。
家庭裁判所において、親権者を変更することにつき、必要かつ相当であることの判断を経ることが要求されますので、注意して下さい。

弁護士からのアドバイス

親権者の件につき、争いとなるケースで、祖父母の意向が影響される場合があります。また、養育費や慰謝料のかけ引きに利用するケースもあるようです。母親の中には、収入が少ないので親権者になれないと思い込んでいる人もいます。しかし、親権者を父母のどちらにするかは上記の判断基準で定められますので、安易にあきらめないようにした方がよいと考えています。

養育費

養育費とは

養育費は、子供(未成熟子)が社会人として自活するまでに必要となる費用のことをいいます。
養育費は、離婚に際して、未成熟子(子供)を実際に養育することになった一方の親(これを「監護親」といいます。)から、他方の親に対して請求できるものです。

養育費の金額

養育費の金額は、双方の親の合意があればその金額で決まります。
合意できないときは、家庭裁判所の調停手続で話し合うことができます。
その際、双方の親の収入をベースにした養育費の算定表が公表されていますので、それを参考に話し合うことになります。
収入の資料としては、給与明細書、源泉徴収票、課税証明書、確定申告書控え等です。
ただし、算定表による養育費の金額には、例えば、月額4万円~6万円というように、一定の幅があります。
親子の個別的な事情から、この幅の範囲内で定めるのが基本ですが、子供が私立大学に進学するという場合には、多額の教育費がかかるため、養育費の増額はこの幅の範囲を超えることもあります。
調停手続でも養育費の合意ができないときは、既に離婚している場合は、審判手続によって家庭裁判所が養育費の金額を定めることになります。
もし、離婚ができていない場合は、訴訟によって離婚と共に養育費の金額が定められることになります。

養育費の支払期間

始期(いつから支払義務が発生するか)

通常、子供の親権者が決まって養育費も決まれば、離婚が成立した日の月から養育費の支払を始めることが基本です。離婚及び親権者が決まって離婚が成立しても、養育費が決まらず、後日、審判手続で決定される場合も、離婚の日の月に遡って養育費が定められるのが基本となります。

終期(いつまで支払義務が続くか)

家庭裁判所での審判の場合は、20歳になる日の月までと定められることが基本ですが、子供が大学に進学することを想定して、両親が大学を卒業する月までと合意しているときは、それに従った決定が出されることもあります。
このような合意がなくても、父母の学歴、職業、子供が生育してきた家庭の経済的、教育的水準に照らして、4年制大学を卒業すべき年齢までと審判されることもあり得ます。

支払方法

① 養育費は、毎月払が原則とされています。
② 支払義務者の親が、毎月の支払は面倒である等ということで、20歳までの分を一括払にしたいと申入れてくることもあります。
この点については、将来継続して養育費の支払われることが期待できない等の理由で、父母間で合意できる場合はよいのですが、ただ、まとまった金額になるため、受け取る側に贈与税が課せられる恐れもありますので、注意が必要です。
また、事情変更により将来の養育費の増減額の事情が発生した場合に、一括払の場合、どのように対応できるか難しい問題が生じることもあり得ます。

養育費の変更

養育費を定めた後に、事情が大きく変わった場合には、養育費の増額あるいは減額の請求が認められることがあります。

養育費増額の可能性のある場合
  • 子供が大学に進学して教育費が大幅に増えた場合
  • 子供が大きな病気や怪我をして入院費・手術費が多額になる場合
  • 支払義務のある親の収入が大幅に増加したり、逆に、支払請求権のある親の収入が大幅に減少したりした場合
養育費減額の可能性のある場合
  • 支払義務のある親が再婚して、新たに子供が増えた場合
  • 支払義務のある親の収入が大幅に減少したり、逆に、支払請求権のある親の収入が大幅に増加したりした場合
  • 支払請求権のある親が再婚したが、その再婚相手と子供が養子縁組をしていないが、再婚相手の収入で子供を養育している場合
養育費の支払を中止することができる場合
  • 支払請求権のある親が再婚して、その再婚相手と子供が養子縁組を行った場合

養育費の変更の方法

養育費の変更を求める親が他方の親に対して、事情を説明して、協議して合意ができれば、養育費の変更は可能です。
その場合は、後日のため、合意内容を文書に残しておくことが大切です。
大半のケースでは、養育費の変更につき、他方の親が応じないでしょう。
そのときは、他方の親の住所を管轄する家庭裁判所に、養育費増(減)額の調停申立を行い、調停手続の中で養育費の増減額について合意に至れば、合意された養育費について、調停調書が作成されます。
もし、調停手続において合意に至らないときは、審判手続に移行し、家庭裁判所が養育費の増減額につき決定することになります。

弁護士からのアドバイス

親権者(監護親)が要求する養育費の金額と、非監護親が認める養育費の金額とは、往々にして開きがあるものです。養育費の目安となる算定表をうまく活用して合意に至ることが、その先長く養育費の支払が続いていくコツです。
両親の離婚によって子供への悪影響ができるだけ及ばないようにすることが大切です。
養育費の定めは、離婚の後にするのではなく、離婚と同時に定めておくことが大切です。
離婚の際に養育費を定めていなかったときは、養育費の金額でなかなか合意に至らないことが往々にしてありますので、注意して下さい。

面会交流

面会交流とは

面会交流とは、離婚後、親権(監護者)にならなかった父母の一方(非監護親)が、子供に面会、文通等の交流をすることをいいます。
この面会交流は、離婚後の子の監護に関する事項として、監護者の指定、監護費用(養育費)と共に「子の利益を最も優先して」考慮すべき事項として明示されており(民766条1項)、重要な事項です。
面会交流は認められるのが原則となっています。
両親の離婚や別居は、子供にとっては非常に大きな出来事です。子供がこの出来事を乗り越えて健やかに成長していくためには、離婚後や別居後も、両親から愛され、大切にされているということを実感して、安心感や自信を持って成長していくことが大切です。そのためには、非監護親が子供と面会交流を円滑に行っていくことが重要になってきます。このため、子供との面会交流は認められるのが原則とされています。

面会交流が認められない場合(例外)

面会交流は子供の福祉のために認められることですので、子供の福祉を害することが明らかなことが客観的に認められる場合には、面会交流が認められない審判が出されることになるでしょう。具体的には次のような場合が考えられます。

非監護親による子供の連れ去りの恐れがあり、それが現実的で避けられない場合
非監護親による子供への暴力など虐待の恐れがあり、それが現実的な場合
非監護親による監護親への暴力等があり、子供への悪影響が避けられない場合
子供が真意から非監護親との面会交流を拒否していることが明白な場合

面会交流の方法

面会交流の方法―直接的な面会方法

特に面会交流について争いになっていない場合には、直接子供と会う方法で行います。調停条項の場合は次のような内容になることが一般的です(申立人が非監護親、相手方が監護親の場合の調停条項例)。

① 相手方は申立人に対し、申立人が未成年者(子供のこと)と月1回程度面会交流することを認める。

② 面会交流の日時、場所、方法等は、未成年者の福祉を尊重し、当事者双方が協議して定める。

その他の方法による面会交流の方法
子供との節度をもった電話やメールのやり取りを認める方法
子供の学校行事(入学式、卒業式、授業参観、運動会等)に参加する方法
子供の様子を撮影したビデオ、写真等を送る方法
学校の成績表を送る方法
面会交流の方法について父母間で合意できない場合

子供との面会交流の方法について、父母の間で合意できない場合は、家庭裁判所に調停申立てをすることができます。公平中立の立場の調停委員が間に入って面会交流の方法について話し合いの調整をしてくれます。
調停手続でも面会交流の方法につき合意できないときは、審判手続に移行し、家庭裁判所が審判という形で面会交流の方法について決定が出されます。

弁護士からのアドバイス

子供との面会交流は、子供の福祉を十分尊重して、円滑に続けていけることが大切です。子供が非監護親と面会交流する都度、子供が父母双方に気を使うような状況に子供を置いてはなりません。面会交流の際、監護親のことを根堀り葉堀り聞いたり、逆に、面会交流後、非監護親のことを聞いたりすることは、子供に余分の負担をかけることもありますので、そのようなことがないように、お互い心掛けることが大切になってきます。

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